InDesign(INDD)の組版や多言語ローカライズに携わっている方なら、テキストフレーム右下に表示される**赤いプラス記号([+])**に悩まされた経験があるのではないでしょうか。
この赤い表示は、組版では文字あふれ(Text Overset)、またはオーバーセットと呼ばれます。現在のテキストフレームにすべての文章が収まっていない状態です。PDFを書き出したり印刷したりすると、あふれた部分の文字は表示されず、印刷物の重大なミスにつながるおそれがあります。
翻訳後に文字あふれが起こりやすい理由
主な原因は、言語ごとに発生する**文字量の増加(テキスト膨張)**です。
多言語ローカライズでは、これは避けにくい自然な現象です。たとえば、次のような傾向があります。
- 中国語から英語へ翻訳すると、必要な文字量が一般に15~20%程度増えることがあります。
- 中国語・英語からドイツ語、ロシア語、フランス語へ翻訳する場合は、単語の長さや文章構造の違いにより、文字量が30%、場合によっては50%近く増えることもあります。
原文ではちょうど収まっていた文章でも、翻訳後は元のInDesignテキストフレームに収まりきらず、複数ページで文字あふれが発生することがあります。
従来のDTP作業:手作業での微調整
従来の印刷前工程(Prepress)やDTPチームでは、翻訳会社からIDMLファイルを受け取った後、まずページごとに赤い表示を探す作業を行います。一般的な対処方法は次のとおりです。
- あふれたテキストフレームを開き、下端をドラッグしてフレームを広げ、残りの文章を表示する。
- フレームを広げると下の画像に重なる場合、フレーム内の文章を選択して、**フォントサイズ(Font Size)**を手動で小さくする。
- フォントサイズを下げるだけでは窮屈に見える場合は、さらに**行送り(Leading)や文字間隔(Tracking)**も調整する。
100ページの商品カタログでは、このような手作業による調整は単調で時間がかかります。数時間を要することもあり、見落としやすい箇所にある文字あふれを残してしまうリスクもあります。
SimplifyAIのアプローチ:翻訳後の自動レイアウト調整
SimplifyAIはこの課題に対応するため、翻訳フローに自動レイアウト調整を組み込んでいます。
SimplifyAIでINDDファイルを処理すると、翻訳文を書き戻した後にページ内の状態を確認し、文字あふれが起こる可能性のあるテキストフレームを検出します。
このプロセスでは、テキストフレームの状態を確認しながら、次の処理を行います。
- あふれの検出:翻訳文を完全に表示できない可能性があるテキストフレームを識別します。
- 動的な調整:あふれが見つかった場合、元のデザインの印象を大きく損なわない範囲で、文字間隔、フォントサイズ、行間を調整し、翻訳文を既存のテキストフレームに収められるよう試みます。
- 可読性とのバランス:文字を無制限に圧縮するのではなく、レイアウトへの適合と読みやすさのバランスを考慮します。
プレビュー用PDFの出力
自動レイアウト調整の完了後、SimplifyAIは最新の翻訳文を反映したPDFプレビューをWeb上で生成します。
ドイツ語やロシア語など、文字量が増えやすい言語でも、元のレイアウトにどのように収まっているかを視覚的に確認できます。そのうえで、必要な箇所だけを人が微調整できます。
企業のマーケティング担当者にも、専門のローカライズサービス事業者にも、自動レイアウト調整はフォントサイズや行間の反復修正を減らす手段になります。デザイナーは、より重要な校閲や視覚的な最終調整に時間を使えるようになります。